toggle

Interview: 人見礼王(修斗ジム東京) PART3

2025.10.23

PART2では、プロデビュー背のなったJMMAルーキーズカップから、修斗での中野戦、加藤ケンジ戦を語っていただきました。いよいよ、話題を呼んだ野瀬選手との一戦、そして、大けがを負ってしまった清水戦を振り返っていただき、復帰してからの展望も併せて語っていただきました。

環太平洋王座決定トーナメント参戦

――― そして、この2連続KO勝利を評価されて、環太平洋王座決定トーナメントへの参戦ですね。メンバーに選ばれたときはどう思われましたか?

自分の中では、まだ、全然見せるべきものを見せていない。加藤選手に勝ったから、ある程度知られたけど、それまでは、人見礼王って誰だよって感じでしたし、ファンは全然期待していなかったと思いますが、自分には自信があったし、チャンスが来たな、と思いました。
環太平洋のベルトも良いけど、それより、全員がしっかりMMA全部が出来る選手だし、全員強い選手だし、本当にやり合える選手が集まって、そこで戦えるのが嬉しかったですね。

――― あのトーナメントは、色々な意味で、けっこう意表を突いてきましたよね。

野瀬選手も、最近、修斗は余り出てない印象で、ROAD TO UFCにも出てるし、RIZINにも出たり、まさかここに参加するとは思ってなくて、想定外でした。たぶん、ダイキライトイヤー選手と川北選手も決まっていて、最後に、誰か一人って感じで自分が選ばれたのかもしれません。

野瀬翔平戦

――― 初戦の相手、野瀬選手は修斗の東京大会にはあまり出ていなかったですが、福岡を中心に活躍していて、実績的にはナンバーワンの選手ですよね。

もちろん、どこでも一本勝ちしている、めちゃくちゃ強い選手だというのはよく知っていました。決まったときは、マジか!と思ったけど、すぐに、やりがいがある、美味しい相手だなと思いました。スタイル的に、打撃vs組み、ストライカーvsグラップラーで、わかりやすいですよね。

――― あの時は、セコンドの鍋久保さんに、「野瀬選手は、強いですよね。スタートから出力が高くて、一気に極めきる強い選手で。」という話をしたら、「お言葉ですが、うちの礼王も同じです。負けません。」と強めに言い返されて(笑)。凄く楽しみにしていました。

野瀬選手が、最初からギアを上げて、一気に飲み込む選手なのはわかってるし、組んでくるのも知っていたし、組みも極めも強いのも知っていました。でも、一気に行くのは、自分も同じタイプで。
だから、自分と、自分の陣営は、本当に自信がありました。周りは、どうせコロッと一本負けするんでしょ?っていう評価だっていうのもわかっていましたが、自分たちは、練習から自信を持っていました。

――― ファイトスタイルは違うけど、最初から出力が高い選手同士、自分が上回ると。

最初の一発目の組みを切る。それを、どんどん繰り返して自分のペースに持っていくというプランで。
最初はうまく行ってたんですけど、やっぱり、自分の詰めの甘さと、知識不足と。なにより、野瀬選手の組み力の強さと、最後まで一本取りに行くっていう気持ちの強さと全部合わさって、完敗しましたけど…。

――― でも、試合はめちゃくちゃ面白くて、会場も爆発するような盛り上がりでした。

やっぱり、野瀬選手の引き出しが多かったです。今は、色んな寝業の知識もあるんですけど、当時はフィジカルと勢いでやってたんで、それでいけると勘違いしていて。試合中に初めて仕掛けられる技もあって、対処もわからないし、何をやられているのかもわからない、とりあえずフィジカルで耐える、みたいな(笑)。

でも、常に上を取って、自分の有利なポジションに持っていくというのがうまくいって、最初のカーフスライサーを耐えた後に、自分が上を取るような展開が作れたのは良かったですね。

――― 野瀬選手はさすがの強さでしたね。

自分に知識がないのに自信過剰だったのはありますけど、自信があったからこそ、ああやって上を取り返せたんだと思うんです。あれが、「組みは無理だから、組まれたらディフェンスしよう」という考え方だったら、たぶん、簡単に寝かされて終わってると思います。そこでも上回るぞっていう自信過剰があったから、自分の良いところも出せたと思ってます。

――― あの試合は飛ばした分、スタミナもきつかったですよね。

それもありましたね。でも、お互い様だと思います。お互い同じタイプで、序盤に一気にあげていくんで、二人ともきつかったと思います(笑)。
それこそ、ダイキ選手との試合でも、野瀬選手が行き過ぎて削られたんじゃないかなと。でも、長所が弱点になるというのは、自分も同じなので、勢いで持って行ける強さと、丁寧な組み立てをする強さと、両方備えないと。

――― 野瀬選手とは、寝業か打撃かの違いがありますが、お互いに攻撃的なところは似ていて、見ていて面白かったのですが、ご本人も楽しかったですか?

楽しかったです。噛み合いましたね。お互いバチバチなので。
楽しかったけど、やっぱり、最後に自分の弱さが出てしまって。本当は、勝って反省するのが一番良いのですが、負けて反省する形になってしまいましたね。

――― フィニッシュは、よく見えなかったのですが…。

アームロックですね。アームロックも、取られかけたら、反対側に行くとか色々対応があるんですが、何も知らなかったです(笑)。
今でも、寝業をよく知っている人からしたら、まだまだ何も知らないレベルですけど……それでも、あの時に比べたら、寝業も色々学んで、何倍も寝業を知ったからこそ、あれでよく自信満々で行けたなって思います。フィジカルと勢いだけで。知識のなさって怖いですよね(笑)。

――― でも、それは、若くて強い選手の特権ですよね。まぁ、でも、悔しいですよね。

悔しかったです。あと一歩のところまで行けたし、あそこで、まとめていれば、展開も変わったと思いますし。ジャッジを見ても、1ラウンド取れていたし、2ラウンド目も、あの一本がなければ取れていたかも知れないし、1,2Rを取れれば組み立てによっては勝てていたかも知れない。……でも、学びにはなりましたね。そこで学んでいなかったら、いずれ、どこかで学ばされるのは変わらなかった。
ただ、もう、負けて学びたくないですね。勝って学べるようにしたいです。

――― トーナメント反対側の山は、川北選手欠場でダイキ選手が勝ち上がって、決勝では、野瀬選手とダイキ選手が対戦して、ダイキ選手が勝利して、環太平洋のベルトを巻きました。

ダイキ選手は上手いです。全部出来るし、全部強いです。
またチャンスが回ってきたら、ベルトも取りに行きますけど、今の自分は、ベルトとか言ってる場合じゃないですし。強ければ、いずれベルトに挑むことにもなると思います。復帰して、一戦、一戦やっていくしかないです。

 

清水俊一戦 怪我で戦線離脱へ

膝前十字靭帯断裂・左右半月板損傷

――― 直近の試合となる1月の清水戦を振り返ってもらえますか。

自信しかなかったです。相手は組みの選手ですけど、野瀬選手も経験して、組みの対処も学んで、行き過ぎるっていうもの、ちゃんと攻撃的に攻めるけど、相手がダウンしても、1回見て、行けそうなら行くと。落ち着いて、倒すというところで、徹底的にしっかり倒そうと思っていました。

――― そんな雰囲気は、試合序盤から見て取れました。

1ラウンドは、打撃の塩漬けで行く、と。2ラウンドあたりからギアを上げて倒そう!
…と思ってたんですけど、1ラウンド目に靱帯を切っちゃって、それどころではなくなって(笑)。
2ラウンド目は、とにかく痛めたことがバレないようにポイントを取るという風にシフトチェンジして。で、何とかポイントは取って。

――― 1ラウンドでもう怪我をしていたんですね。

2ラウンドは、痛みは気合いで何とかなったんですけど、多分、その時、前十字靱帯と、内側、外側の半月板全部3つ断裂、痛めたんですよ。

――― うわぁ…。そもそも、どのタイミングで怪我をしたんですか?

1ラウンド目に、二重絡みで。たぶん、1ラウンドに前十字靱帯を断裂してるのに、バリバリ動いていたんで、最後、半月板も両方やってしまった、みたいな感じで。
2ラウンド目は、靱帯繋がってない状態でぐらぐらしてたけど、バレないように出来たんですけど、3ラウンド目は、もう痛いとかではなくて、力が入らなくて、踏み込めなくなっちゃって。最初の方はバレないようにやってたんですけど、途中から、周りが見てもわかるくらいに、カクってなっちゃって。

清水選手も経験豊富で強いんで、そこを見逃さず詰めてきて、バック取りに来て。あの時は、対処に必死でしたね。立とうと思っても、踏ん張りがきかなくて、寝ている状態でとりあえず取られないようにするしかない、という感じでした。

――― 正直、1,2ラウンドは気付きませんでした。解説も松根さんですら、3ラウンドに異変に気付いた感じでしたし、たぶん、あの会場で異変に気付いた人は、一人もいなかったのでは。というか、痛みが凄いというし、普通、動けないでしょう。凄いですよね……。

それは、みんなに言われますね。本当にバレないようにしていたんで、痛いけど、後ろ回し蹴りもだしたり。自分の膝を担当しているリングドクターの福田先生も、2ラウンドまでは気付かなかったそうで。
でも、弱点はバレないようにするのが大事ですから。まぁ、そんな凄さは要らないんですけど(笑)。

――― セコンドにはすぐ伝えたんですか?

2ラウンドが終わった後に言いました。1ラウンド終わったときに言おうかと思ったんですけど、セコンドも焦るかなと思って(笑)。

二重絡みをほどいたときに、プチッという感じで、体内で音がして、普通とは違う怪我だなとは思ったんですけど、自分も何が起こっているのかわからなくて。試合だから痛いのも当たり前だし、怪我なんて当たり前だと思ってますから。腕の一本くらい折れるのも、最悪、死ぬかも知れないっていうくらいの覚悟でやってるので、わざわざ言うほどではないかな、と。

――― いやいやいや……ただ、怪我はわかりにくいですし、自己申告だけでは、セコンドも止めるかどうかの判断が難しいですよね。

止められたら困りますから(笑)。

――― しかし、その怪我を抱えながら、寝業の攻防の中で、蹴りが当たったということで、減点になってしまいました。流れの中でのことですし、強く当たったわけでもないし、正直、減点は気の毒だなと感じました。

まぁ、耳に当たって、顔に触れたというのは事実ですし。ルール上の中でのことですし。まぁ、終わった話なので。

――― 結局、それが響いてドローに持ち込まれてしまって、ちょっと、もったいなかったですよね。

でも自分の戦績を見直して、フィニッシュ率100%のままになったんですよ。あれが判定勝ちだったら、フィニッシュ率100%を割っちゃっていたんで、まぁ、それが維持できたということで、ここから全部KOしろってことだな、と思っています。

――― 試合が終わって、負傷について正式な診断が出たときは、どういう心境でしたか。

けっこうショックが大きかったですね。ちょうど1月の開幕戦で、今年は、3,5,7,9,11月と全部出て、大暴れして、完全に上に行ってやろう!って思っていたんで。まぁ、怪我はしたから、3月はダメでも、5月とか行けるだろうと思っていて。
まさか、そんな大怪我だと思わなかったんですけど、確かに、その時も松葉杖がないと歩けなくて(笑)。松葉杖ついて病院に行ったんですけど、1週間、2週間でよくなって…みたいなイメージだったんで、長引きそうでショックでした。

――― すぐ手術だったんですか?

2月14日でバレンタインデーに手術でした。だから、福田先生から、「俺からのバレンタインプレゼントだよ」って再建手術してもらって。
ショックではあったけど、切り替えるしかないって思って、そこから次の試合まで何をすべきかという方向で考えました。

復帰後の展望

――― だいぶプランは狂ってしまいましたが、復帰したら、こうしたいという思いはありますか?

全員ぶっ飛ばしたいですね!

――― それは、そうですよね。そして、修斗で一通りぶっ飛ばした、その先は?海外を狙う?UFC?

今の自分を端から見たら、まだ早いだろって言われると思うんですけど、自分は一応、修斗のベルトもそうだけど、海外挑戦を見据えていて。やはり、UFCに行きたいです。
以前は、海外に行くためのステップアップとして、一刻も早くベルトを取って…という感じだったんですけど、今は、一戦一戦しっかり勝って、そのうえで、ROAD TO UFCに出られるような戦績を取りつつ、その中で、修斗のベルトもたどり着ければ良いかなと思ってます。

……あとは、早く永井選手と戦いたいです。

――― おお、永井選手のお名前が出ましたね!先日の齋藤選手と永井選手の試合は会場でご覧になってましたが、どのような印象を受けましたか?

素晴らしかったです。二人とも、凄く強い選手なのは知っていましたけど、あの試合を見て、より凄い選手だと感じました。
齋藤選手が1ラウンドにパンチを当てて、削れるかなと思っていたのに、永井選手のスタミナが予想以上に凄かったですね。やっぱり、永井選手は気持ちも強くてスタミナがあるので、意識を飛ばすくらいじゃないと勝てないな、と思います。

――― 齋藤選手のパンチも凄かったですが、永井選手が素晴らしかったですよね。

凄く強い、修斗の王者に相応しい、素晴らしい選手だと思いました。あの日、より、ベルトを奪う価値があがったと思います。

――― 早く、永井選手vs人見選手は見てみたいですが、かといって、怪我が再発されるのも困ります。

自分が、何試合かやって早くたどり着かないと行けないと思っていますが、11月に焦って出て、ここで怪我を再発させて長引かせたら意味がないので。一つ一つ勝っていきます。

――― もし、実際に戦うならば?

永井選手は、ダイキライトイヤー戦でも被弾しているし、齋藤選手のパンチももらっている。自分のパンチが当たれば、沈められます。

――― 自信ありですね。その日が来るのを楽しみにお待ちしています。長時間お話しいただき、ありがとうございました!

 

おまけ

――― フィジカルトレーニングもされているんですか?

特にやってはいないんですよね。大学の寮に筋トレ施設があって、1,2年生の頃はウェイトトレーニングもやって、ベンチプレスも140kgくらい挙げてたりしたんですが、MMAを始めてからはウェイトはやらなくなりました。
部位的な筋力は落ちていると思うんですけど、組みの練習が増えたから、対人でのフィジカルでは、今の方が強いですね。昔の方が胸筋はあったけど、今の方が背中は広いし。

――― 怪我もあって、またそのあたりも見直す感じになりますか?

海外を狙うことも見据えて、いずれ自分も、しっかりとウェイトを取り入れないと行けないなとは思うんですけど、今は、他に学ぶべき事が多すぎて。

――― やることがいっぱいありますものね。

本当にやることがいっぱいあって。自分なんて、MMAでは赤子になれているかどうかというレベルなので。

(了)

 

3回に分けてお送りすることとなったインタビューですが、幼少期からじっくり語っていただいて、人見礼王というファイターの解像度が上がった感じがしました。
「やっぱり、プロ選手ってどこかがぶっ飛んでいるな」と思わせる発想。それでいて、言語化によどみがない頭の良さ。怪我の回復に時間を要してしまいましたが、フィジカルトレーニングなしで、この体、この出力というのは、これから、楽しみしかないです。要注目の高出力・高火力ファイター、人見礼王。来年をお楽しみに。

 

<人見礼王インタビュー>

PART1: https://fightmemo.com/fighter/1749
PART2: https://fightmemo.com/fighter/1771
PART3: https://fightmemo.com/fighter/1772