Interview : 猿丸ジュンジ(第9代修斗世界ストロー級王者&SARUMRU FIGHT主催者)
今回のインタビューは、元世界王者の猿丸ジュンジさん。5回の世界王座挑戦を経験し念願の王座を獲得、2023年に引退。現在は、若い選手の指導に当たりながら、さらにアマチュア修斗などの大会「SARUMARU FIGHT」を主催。そのSARUMARU FIGHTの意義を伺うとともに、現役時代のお話を聞いてみました。
(収録日:2025年7月1日)
PART 1|SARUMARU FIGHTについて
「デビュー戦はSARUMARU FIGHTで!」
試合に出てみたい人のファーストステップに。
――― 猿丸ジュンジさんが主宰する、アマ大会「SARUMARU FIGHT」についてお伺いします。まず、大会の趣旨などをお話しいただけますか?
今、ジムやパーソナルトレーニングで格闘技を学んでいる皆さんが、自分の技術を試したいな、試合に出てみたいな、と思ったときに、参加しやすいファーストステップとしての大会を作りたいなと思っています。
アマ修斗は、全日本選手権、地区選手権のほか、下町フリーファイトや湘南フリーファイトのようなワンマッチ大会が実施されていますが、SARUMARU FIGHTは、その入門編のような位置づけとして考えています。
――― 東京でのアマ修斗では、関東選手権、下町フリーファイト、SHINEといった大会がありますが、そこに続く大会ですね。
アマ修斗は、地区選手権から全日本選手権へのトーナメントは完全に確立されています。ただ、ワンマッチ大会は、以前はもっと大会がありましたが、今は、ちょっと少ない。もっともっと、アマ修斗の経験を積める大会があるべきだと思っています。
SARUMARU FIGHTは、その経験の場の一つとして、特にエントリー層を担う、最も参加しやすい大会にしたいと考えています。レベルが上がったら、SHINEや選手権など上位の大会に出てもらえば良いと思っています。
――― アマ修斗だけではなく、キックボクシング・スタンディングバウトを取り入れた理由はなんでしょうか?
実は、MMAのジムに入会しても、キックボクシングのクラスだけに参加している生徒さんがたくさんいらっしゃいます。また、キックボクシングのジムに通われている方でも、いきなり、既存のキック団体の大きなアマ大会に出るのはハードルが高いな、ちょっと怖いな、という方もいらっしゃいます。
SARUMARU FIGHTは、そんな皆さんにも参加しやすいように、キックボクシング部門のルール・クラス設定をしています。キックはしんどいけど、パンチだけならやってみたい!という人も歓迎です。
欲を言えば、そこから、「MMAも楽しそうだな」って思って、さらにMMAにも挑戦もらえたら嬉しいですね。
――― たとえば、MMAをやっている人がキックにエントリーしたりすることもOK?
大歓迎ですね。しばらくMMAから離れていて、でも試合は出てみたいという人が、キックの方に出てくれたりするのはありがたいですね。
また、打撃を磨きたいという希望でキックにエントリーしてもらうのもOKです。
――― 大会として心掛けていることは?
まずは、安全であること。第一はそこです。
より安全なルールの設定や、ドクターの手配などの体制作りにおいて、何よりも安全を第一に考えています。
そして、気軽に参加できること。そのなかで、ピリッとした格闘技の面白さを経験してほしいですね。
――― 今後の展望について
第1回は、「猿丸が大会をやるから、協力してやろうぜ!」という周囲の皆さんのおかげで、お祭りのような大会にしていただきました。参加者も、想定を超えて大勢の方に申し込んでいただいて、凄く賑やかな大会になりましたが、第2回からが、本当のSARUMARU FIGHTのスタートだと思っています。
まずは、自分たちのできる範囲でコツコツと回を重ねていき、競技人口を増やすことに貢献して、いずれ参加人数が増えてきたら、少しずつ回数を増やしていきたいですね。
――― 参加される皆さんへ
自分が学んだ技術を存分に発揮して、試合を楽しんでもらいたいですね。
アマ修斗は、この先、選手権、そしてプロ修斗へと道が続いているので、最初の経験をじっくり積んでいってほしいです。
キック、スタンディングバウトに参加される皆さんには、とにかく楽しんでほしいですね。頑張って下さい!!
→ 2025年8月10日開催 SARUMARU FIGHT 02の情報はこちら
PART 2|猿丸ジュンジインタビュー
アマ修斗の経験をもっと積んでおけば良かったかなって。
――― 猿丸選手は、高校生の頃は野球をやられていて、その後、修斗を始めたと聞いています。
高校まで野球をやっていて、途中で、「あれ、俺、プロ野球選手にはなれないな…。」って思っちゃったんですよ。「プロ野球選手は、体がデカいな!俺、サイズが小さすぎるな!」って気付いて。
――― 確かに、プロ野球選手は、体が大きい選手が多いですよね。
野球も階級制だったらプロにもなれたと思うんだけど。60kg以下のプロ野球とかあればね(笑)。流行らないと思うけど、階級制の野球とかサッカーとか見てみたいよね。
――― そこから、すぐにプロ格闘技を目指していたわけではない?
いや、全然、プロ志望で入ったわけではなかったですね。夏で引退したんですけど、ずっと野球をやっていたから、野球を辞めても運動はしたい、体は動かしたいなと思っていて。それで、当時テレビでも見たりしていた格闘技のジム(シューティングジム横浜)が近所にあったので、そこに入門しました。
――― 当時のシューティングジム横浜は凄いメンバーでしたよね。
リオン武さん、マモルさん、ウィッキーさん、不死身夜天慶さん…。強い選手に囲まれている上、自分はサイズが小さいから、練習はきつかったですね。
――― アマ修斗はどれくらい経験されましたか?
15戦…くらいかな。正確には覚えていないけど。デビュー戦は、大宮フリーファイトに出ましたね。
ワンマッチで勝利して、当時はフレッシュマントーナメントというのがあって、そこで勝って、選手権に出て、全日本アマチュア修斗選手権まで。それからプロになりました。「THE修斗」の道でしたね。
――― 翌年にはプロデビューされて、一気にアマ修斗を駆け抜けた感じですし、アマ修斗はあまり印象に残っていなかったりしますか?
いや、そんなことはないですよ。やっぱり最初の試合が大事でした。もちろん、初めての試合で、何にもわからなかったし、凄く緊張したし、そこで勝って、自分のやってきたことが実ったという嬉しさがありました。
それで、アマチュア修斗で1回勝って、そこで初めて、「あ、俺、プロになりたい!」って思いました。プロになりたいからアマ修斗を始めたんじゃなくて、アマ修斗で勝てて、そこでプロになりたいと思ったんです。
――― そして、プロ昇格して、20007年にはプロデビューですね。
でも、アマ修斗で、もう少し経験を積んでおけば良かったなって思います。
アマ修斗は、勢いで勝ち進んでしまったから、まだ本当にプロとしての力が身についていなかった。結果的に、プロになっても、勝ったり負けたりだったけど、早い段階で負けが続いていたら、辞めてしまっていたかも知れないです。
プロで戦うのに必要な技術や心構え、そういうものを身につけるアマ修斗をもう少し経験すべきだったなと思ってますし、今、指導している選手にもそういう思いを持っています。
プロでの思い出 修斗のベルトへの思い
――― 2007年にプロになって、2023年に引退するまで、プロキャリアも長かったですよね。
プロの思い出なんて、楽しいものなんてそんなないですよね。減量も、怪我も、辛いことばっかりで(笑)。
――― 猿丸選手というと、修斗世界王座に5回挑戦したことが、ぱっと思い浮かびますよね。
ベルトへの思い…ベルトへの思いっていうのは、一番最初の挑戦で負けたから、ですね。あの試合で負けた時からですね。ベルトを取りたいって、強く思ったのは。
――― 最初の挑戦は2011年の生駒戦でした。
実は、その前に、当時の王者、ランバー・ソムデートM16選手と戦ってみたいな、って思ったんですよ。ベルトを取りたいというより、ランバーとやりたい!と。で、タイトルマッチも決まって。
――― 確かに、ランバー選手は、ムエタイから日本のキックボクシングに参戦して、驚異的な強さでした。そして、修斗に転向しても強かった…。
ああ、なんか、凄い強い選手いるなぁって。勝ちたい、っていうよりは、戦ってみたいと思いましたね。ベルトより、強い選手とやりたいっていう思いが強かったんですけど、結局、ランバー選手の怪我やら震災やらで、試合が流れてしまったんです。
――― そのあとに組まれたのが生駒選手との試合でした。
ランバーと戦いたいという目標で頑張ってきて、やっと試合も組まれて、発表の記者会見もしたのに、それが実現しなくて。
大きな目標を見失って中途半端なまま、生駒さんとのタイトルマッチが組まれたんですけど、そこで負けてしまって。腰痛もひどいし、ああ、もうこれで引退しようかな…とも思いました。
――― そんな状況だったんですね。
でも、応援してくれている周りの皆さんが、「凄い試合だったよ!」「もう一回、猿丸の試合が見たい!」「次の試合はいつなんだ?」と声をかけてくれて。
ああ、これは、ベルトを取るまでやるしかねぇな、と思って。そこで、自分の目標が切り替わりました。ベルトを取る、と。誰と戦おうが、何でもいいからベルトを取るっていうのが目標になりました。
――― 5回目の挑戦で、それが実現します。
結局、何度も何度も負けてしまって、ベルトを取り損ねたんだけど、そのたびに、応援してくれる人がいて、絶対、この人達の為にもベルトを取るって思いは諦めずにやってきましたね。頑張りましたよ。
最初の挑戦以降は、相手は誰もいい、ベルトを取るんだという思いでやってきて、やっと最後にベルトを取って、今まで応援してくれてきた人たちに、そのベルトを巻いてもらって、本当に良かったです。
黒澤選手を破り、暫定世界王者になると、その試合後のマイクで「逃げずに、諦めずに、修斗でやってきて、諦めないでよかった。諦めなかったのは、応援してくれたみんなのおかげ。だから、これはみんなのベルトです。」と語った。
――― 引退試合となった、安芸柊斗戦はいかがでしたか?
(かつて、猿丸選手が安芸選手の父親に勝利していて、その息子がリベンジを挑むという修斗伝承マッチの構図だった)流れ的には、自分が負けた方が良かったかもしれないけど、56kgでやるなら負けねぇぞ!って。
――― そうでした。最後の試合はフライ級の試合でしたね。
ストロー級にこだわっていたのは、最初にベルト挑戦で負けたのがストロー級だったからですね。でも、減量がきつかった。もう引退も決めていて、ベルトやランキングに関わる試合じゃないから、フライ級でやらせてほしいと思っていましたが、安芸選手もフライ級でやりたいといっているということで、タイミングも合った。56kgでの試合は、元気でしたね(笑)。
それ以外にも、コロナ禍で、1回だけ、当日計量の56kgでやった試合(飯野タテオ戦)があって、あれも元気で、よく動けた試合でしたね。
――― そこで、現役生活、プロでやるべき事は全部片付けた、という思いでしたか。
そうですね。全部片付けて引退できたなって思います。
でも、本当は、その前に引退するつもりだったんですよ。(新井丈戦で)負けて引退するつもりでした。ベルトも取って頑張ってきた。でも、負けました。次の選手に引き継がれる。それで修斗が回っていくわけです。そこで終わりでも良かったんですよね。
ところが、Mobstylesの田原さんから、安芸戦のオファーが来たんで、引退撤回しますって(笑)。
もともと好きだったMobstylesとともに
――― Mobstylesとはデビュー当初からの関係ですよね。
高校生の頃、格闘技始める前から音楽関係でも知ってて、Mobstylesが好きだったんですよ。当時、Mobstylesというとスタジャンが格好良くて、自分も買ってました。
それで、ジムには、リオン武さん、マモルさんなど、Mobstylesにサポートされてる選手もいて、Mobstyles良いッスね!って話をしたら、リオンさんに、物販とかお店に連れて行ってもらって、そこで、代表の田原104洋さんとお話しさせてもらったり。
デビュー戦が決まったときに、お店に行って報告したら、「コレをはいて出なよ!」っってファイトパンツをもらって、凄く嬉しかったですね。
――― デビュー戦の頃からmobstylesのサポートを受けるって、レアなケースですよね?
そうかもしれないですね。プロデビュー当初から、Mobstylesにはずーっとお世話になっているから、Mobstylesの興行をやるときには、何が何でも絶対出るぞ!って思いはありました。
それこそ、後楽園ホールで行われたモブ興行での最初の黒澤戦の時は、左足をひねって靱帯を伸ばしてて、右手は折れて拳が握れない状態で、坂本代表からも田原さんからも「出るな!」って言われたんですよ。けど、俺はMobstyles興行には絶対出るぞって決めてたから、「右はダメでも左で打てます」って、そんな状態で出たり(笑)。
そんな感じで、新井選手に負けて引退するつもりだったけど、最後の最後に、田原さんから、Mobstyles興行で安芸柊斗選手とやってくれないか?ってオファーをいただいたんで、「出ます!やります!!」となりました。豊洲PITの客席がパンパンに埋まったし、マモルさんの引退試合と同じタイミングになったし、まぁ、結果オーライ。
――― 凄いです(笑)。あの時の大会終了後は、さながらシューティングジム横浜同窓会のようでした。
でも、もう引退したけど、今も強くなりたいと思っていますよ。練習もしてるし。来年は、グラップリングや柔術にも出ようかなと思ってます。
――― 強くなることへの探求心は変わらずということですね。長時間、濃密なプロキャリアの裏側を聞かせていただいて、ありがとうございました。
【編集後記】
本来、このインタビューは、現役の選手を取り上げていく予定でしたが、今回、SARUMARU FIGHTを少しお手伝いさせていただいている関係もあり、2023年に引退された元世界王者、猿丸ジュンジさんにお話を聞かせていただくこととしました。
アマ修斗の大会を開く意図、そして、ご自身のアマ修斗から振り返っていただき、プロの最終章へ。最後は、Mobstyelsのお話も伺って、締めとしました。
もっと個別の試合のことを聞くべきだったかもしれませんが、私としては、この猿丸ジュンジというファイターの生き方のカッコよさを感じられるインタビューとなって満足しています(自己満足)。最後に、若い世代で注目している選手はいますか?と尋ねたのですが、「そういうのは答えないよ。みんな頑張ってる。自分の指導する選手も頑張っている。その対戦相手も頑張っている。彼らが、試合で、自分が磨いてきた技や実力をぶつけ合ってくれれば、それでいいんです。」と、最後までカッコいい言葉をいただいた。
現役が終わった後ではありますが、こういう本物の選手に触れられて、お手伝いできてよかったなと思っています。ありがとうございました!










